大腿骨頭壊死に対する人工骨頭置換術(腰椎麻酔) 1(大腿骨頭壊死) 大腿骨の一番頭側(大腿骨頭という)は球状をしていて、骨盤の一部(寛骨臼)との間で 股関節という関節を形成しています。この大腿骨頭へ血液を供給する血管が、何らかの原 因で障害をきたすことがあります。 原因としては外傷、アルコールの大量摂取、薬物(副腎皮質ホルモンなど)の影響、SL Eなどの自己免疫疾患、その他の疾患などがありますが、原因の不明な場合があり、これ を特発生大腿骨頭壊死と呼んでいます。 大腿骨頭への血流が途絶えると、やがて大腿骨頭は組織が死んでしまいます。そのまま放 置すると大腿骨頭がつぶれてしまい、股関節に重度の障害を残します。 大腿骨頭壊死は歩行時の股関節痛が初発症状ですが、程度が軽く骨頭の変形をまだ生じて いない時期であれば、血行のある骨を移植する等の方法で治療することがあります。しか し壊死が進行し骨頭がつぶれてしまっている場合は、骨頭を切除し人工材料の骨頭に置き 換える手術を選択することがあります。臼蓋(関節の屋根側)が傷んでいる場合は、それ も人工材料で置き換えることがあります。 2(麻酔) 手術は腰椎麻酔で行います。まれに麻酔によりショック症状等が生じる場合があります。 その場合は直ちにその治療をします。また術後一時的に頭痛等が生じる場合があります。 3(手術) 手術では、股関節側面〜後面の皮膚を約 cm切開します。股関節内を観察したあと、大 腿骨頭を切除して人工材料(合金や合成樹脂など)の骨頭で置き換えます。骨粗鬆症等で 骨が弱い場合、人工骨頭と骨のすきまに骨セメントを充填し、ゆるまないようにする場合 があります。 4(輸血) 手術による出血のため、輸血を必要とすることがあります。輸血が必要な場合は、患者さ ん自身の自己血または日赤に依頼した血液を準備します。 5(手術後療法) 手術の翌日からすわれます。順調にいけば、手術後 日で松葉杖や歩行器を使用して歩 行が可能です。また手術後 週間は、松葉杖などを用いて手術をした脚にかかる荷重を 減らしていただきます。なお手術後約 週間は、股関節を内側に捻りすぎると人工骨頭 が脱臼することがありますので、注意していただきます。 6(リハビリ) 人の循環(血のめぐり)、呼吸、筋肉、骨、関節などは不必要に安静にしているとその機 能が低下し、回復に相当な期間と努力を要することがあります。そのため、患者さんの状 態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリ等で機能訓練に努めていただきます。特に 下肢の筋力増強訓練が重要です。 7(再手術) 人工骨頭の耐用年数は約15年とされています。耐用年数を過ぎ傷んだ人工骨頭は、入れ 換える手術が必要になります。しかし何らかの原因で、それよりも早くすり減ったり、ゆ るみを生じたりして早期に再手術を必要とする場合があります。大事な人工骨頭を長持ち させるため、日頃から杖を使用されることが必要です。 8(感染) まれに手術部に細菌が感染し、人工骨頭の周囲が化膿して治療が困難になることがありま す。その予防のために、抗生剤を点滴・内服薬等で投与させていただきます。もし感染を 生じた場合は、直ちにその治療を開始します。 9(脂肪塞栓) 大きな骨に関係する手術の場合、まれに骨髄内の脂肪が全身(特に肺や脳)にまわって塞 栓(血管がつまること)を生じ、肺・脳などの臓器の重大な症状が出現することがありま す。もし発症した場合は、直ちにその治療を開始します。 10(合併症・後遺障害) 手術によって持病の悪化、高齢者の場合は痴呆の出現・増悪、肺炎・膀胱炎などの併発、 床ずれ等が生じる場合があります。多くの場合、手術をした関節は手術前よりもその可動 域(曲げ伸ばしの範囲)が小さくなります。その他、筋力の低下、脚長差(脚の長さが左 右で違うこと)、目立つ傷跡、種々の痛み・しびれ等が残る場合があります。 |