臼蓋回転骨切り術(全身麻酔)

1(臼蓋形成不全の治療)
股関節は大腿骨と骨盤との間の関節です。骨盤側は寛骨臼蓋といい、お椀の内側のような
屋根を形作り、球状をした大腿骨の一番頭側(大腿骨頭という)との間で股関節という関
節を形成しています。
この股関節の屋根にあたる臼蓋の発育が生まれつき悪いことがあり、これを臼蓋形成不全
と呼んでいます。臼蓋形成不全のため、場合によっては先天的に股関節が脱臼しているこ
ともあります。脱臼していなくても股関節の屋根が小さいわけですから、股関節に無理が
かかり、早期に関節が傷み、変形性関節症という状態になる可能性が高くなります。
臼蓋形成不全がある場合は変形性関節症にならないように、過度なスポーツ・労働を控え
る、肥満を予防する、股関節周囲の筋肉を増強させる、杖を使用するなどのケアが必要で
す。それでも、早晩股関節が傷み関節症になることが多く、その治療に昔からいろんな手
術が行われてきました。
股関節の破壊が軽微な場合は、骨盤側の骨を切って回転させ、臼蓋が大腿骨頭を包む面積
を増大させる手術法があります。この手術のメリットは、解剖学的に本来の股関節の形状
に近い状態に関節を形作れることです。ただし骨盤を切るため出血量が多く、輸血が必要
になるなど、けっこう大手術になります。
股関節の破壊が重度な場合は、もはや骨切り術の適応はなく、他の選択として股関節を人
工材料の関節で置き換える手術方法(人工関節)があります。

2(麻酔)
手術は全身麻酔で行います。麻酔は麻酔科医が実施します。全身麻酔は安全な麻酔ですが
患者さんの状態、持病、体質、年齢などによってはリスクを伴う場合があります。なお手
術後の痛みを和らげるため、背骨の神経に麻酔剤を注入するチューブを一時的に入れる場
合があります。なお全身麻酔からさめたとき、まだのどにチューブが挿入されている場合
がありますがすぐに抜きます。また、手術後しばらくの間、尿道に管を入れている場合が
あります。

3(手術)
手術では、股関節前側面を約15〜20cm、後面の皮膚を約10cm、計2カ所切開する方
法をとります。骨盤の腸骨・坐骨・恥骨という骨を切り、臼蓋が切り離された状態にし、
この臼蓋を骨頭を包むように回転させます。回転された臼蓋は、数本のやや太めの鋼線で
固定します。

4(輸血)
手術による出血のため、輸血を必要とします。輸血のため、患者さん自身の自己血、また
は日赤に依頼した血液を準備しています。

5(手術後療法)
手術の翌日からすわれます。順調にいけば、手術後  日で松葉杖や歩行器を使用して歩
行が可能です。また手術後  週間は、松葉杖などを用いて手術をした脚にかかる荷重を
減らしていただきます。

6(リハビリ)
人の循環(血のめぐり)、呼吸、筋肉、骨、関節などは不必要に安静にしているとその機
能が低下し、回復に相当な期間と努力を要することがあります。そのため、患者さんの状
態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリ等で機能訓練に努めていただきます。特に
下肢の筋力増強訓練が重要です。

7(再手術)
骨切り術により関節のはまり具合(適合性)が良くなっても、まったく健常な状態になる
わけではないのと、既に関節の軟骨が多少痛んでいることもあり、将来関節の破壊が進み
人工関節などの再手術が必要になることがあります。手術後も、過度な運動の制限、肥満
の予防、筋力強化のリハビリなどの日常的なケアが必要になります。

8(感染)
まれに手術部に細菌が感染し、骨切り術の周囲が化膿して骨髄炎を生じ、治療が困難にな
ることがあります。その予防のために、抗生剤を点滴・内服薬等で投与させていただきま
す。もし骨髄炎を生じた場合は、直ちにその治療を開始します。

9(脂肪塞栓)
大きな骨に関係する手術の場合、まれに骨髄内の脂肪が全身(特に肺や脳)にまわって塞
栓(血管がつまること)を生じ、肺・脳などの臓器の重大な症状が出現することがありま
す。もし発症した場合は、直ちにその治療を開始します。

10(合併症・後遺障害)
手術によって持病の悪化、高齢者の場合は痴呆の出現・増悪、肺炎・膀胱炎などの併発、
床ずれ等が生じる場合があります。多くの場合、手術をした関節は手術前よりもその可動
域(曲げ伸ばしの範囲)が小さくなります。その他、筋力の低下、脚長差(脚の長さが左
右で違うこと)、目立つ傷跡、種々の痛み・しびれ等が残る場合があります。