[Q&A ライブラリーへ戻る|Jun/1998〜 膝関節 Q&A]

〜May/1998 膝関節 Q&A ライブラリー

Y.F [98年 5月 15日 (金) 7時 54分]

 東京都在住の38才の男性です。膝の手術のことで相談したいと思います。
 私は、平成3年12月に右膝の手術をしました。原因は転倒して膝を強く打ったためですが、大腿骨骨軟骨炎(軟骨の剥離骨折)ということで、手術は骨自体が年齢のわりに弱かったため、腰の骨(骨髄?)を移植して行われました。現在もスクリュウが3本入っています。
 右膝の手術は、大阪の大手前病院の門田先生(確か、奈良医科大出身だったと思うのですが)と同大学の藤沢先生に来ていただき行われたと聞いています。手術後、骨自体が弱いため、左膝も将来同じようになるかもしれないと言われていました。
 最近、左膝の痛みが出たため、病院で診察を受けたところ、1ヶ月ほどかかって、昨日右膝と同じ状態ではないかと診断され、その先生の出身大学の症例検討会にかけてから、対応を考えるとのことでした。答えが出るのは10日後になるそうです。
 右膝の手術の時、かなり難しい手術と聞いていましたが、現在もやはり困難な手術なのでしょうか。右膝の調子が良好なだけに、東京での受診経過からは、右膝のような手術がきちんと行われるかどうか不安です。

[tomos]

 Y.F 様の診断名は、「離断性骨軟骨炎」といいます。これは、幼少時のまだ膝の組織が成長期で柔らかいときに、繰り返し加えられた外力などにより大腿骨の膝関節の関節軟骨に接する一部分が「離断」(ちぎれること)してしまった状態をいいます。離断した部分の関節軟骨(関節の表面)が連続している軽いタイプから、完全に離断して遊離しているタイプまでいろいろあります。両側に発生する場合が約20%あるそうです。
 Y.F 様の右膝は、平成3年に打撲した時に、この離断性骨軟骨炎の部位が転位(ずれること)して症状が発現したのでしょう。
 この疾患の治療法は、ほぼ確立しています。症状が軽く関節軟骨の連続した軽症例などでは、まず運動を制限するなどの保存的治療を数ヶ月行います。小児ではギプス固定することもあります。保存的治療で症状が良くならない場合や、完全に離断・遊離した症例は、手術的に治療します。
 手術ですが、小児の関節軟骨の連続した症例では、ドリリングといって、ドリルで病巣部にたくさんの穴を開けることもあります。これで離断した部位を癒合させます。難治例や、完全に離断・遊離した例では、Y.F 様のように離断した骨軟骨片を骨移植して癒合させたりします。骨軟骨片を摘出したり、骨移植だけを行う場合など case by case です。
 予後(今後の経過)は、若年者の症例ほど治りがよいそうですが、治療が順調に行けば、成績は良好だそうです。一部に変形性関節症(関節が過度にすり減り変形した状態)になる例があります。
 ところで、藤沢先生は奈良医大出身の膝関節外科の専門家で、学会でも活躍されています。tomos も面識があります。また、大阪の大手前病院・整形外科は、奈良医大から医師が派遣されていて、門田先生もその一員でした。門田先生は、現在奈良県の病院で活躍されています。当時の大手前病院整形外科部長の谷口先生は、現在も同院で活躍されています。なお、谷口先生は、tomos が三重県の病院での勤務時代にご指導いただいた大先輩です。

(May/16/1998)

[98年 5月 08日 (金) 17時 27分]

 こんにちは、私は24歳女性です。4年前に、前十字靭帯損傷のため手術をして人工靭帯をいれました。
 ところが、今年の3月の定期検診で、主治医から「その人工靭帯も切れているようだ」と言われました。けれども今までと変わりなく日常生活を送っているし、走ることは出来るのです。4年前のことを考えるとどうしても信じられません。ただ、歩いているとたまに膝が「カクッ」とくることはあります。
 「スポーツをするのなら手術をした方がいいけど、このまま普通に生活するのであれば手術をする必要はない」と言われました。それから半月板も損傷していて2年前に関節鏡検査しましたが、損傷が小さいためそのまま検査だけで終わりました。スポーツはしたいけど手術するのはいろいろと大変です。
 靭帯にしろ半月板にしろ、主治医の言うとおりこのままにしておいても大丈夫なのでしょうか?ちなみに膝はきちんと曲がるし、正座もできます。

[tomos]

 「Q&Aライブラリー」に前十字靱帯損傷と半月板損傷の合併の記載が、また「整形外科手術説明書」に膝関節鏡検査前十字靱帯再建術半月板切除術半月板縫合術の説明がございます。ご参考になさってください。
 数年前までは、前十字靱帯の再建術に人工靱帯のみを使用する手術がよくおこなわれました。しかし、最近になって、それらの症例のうちに人工靱帯の断裂する例が多く認められています。現在は、前十字靱帯の再建術には膝蓋腱などの自家組織を用いるのが主流で、人工靱帯は補助的に再建靱帯の補強に用いられることが多くなっています。
 年齢の高い方、あまり体を動かさない方は手術の必要はないでしょう。でも、スポーツ等の活動的な生活をなさるのであれば、手術をお勧めします。なお、前十字靱帯損傷がある場合には、半月板損傷のみを治療しても半月板損傷が再発する可能性が残ります。前十字靱帯と半月板損傷を同時に手術的に治療する必要があります。

(May/10/1998)

バッジョ [98年 5月 03日 (日) 22時 11分]

 30歳男性です。私は,週に2回ジョギングをしています。走るペースは「ニコニコペース」で、決してオーバースピードにはなってません。
 最近,ジョギングをしていると3〜4kmあたりで左膝の外側が痛くなります。それでも、走りたいという意志がありますので、無理をして10km程度走りぬいてしまいます。走る前と走った後は必ず外用消炎鎮痛剤を膝に塗り,ストレッチをするように心がけていますが,効果がありません。
 一時走るのをやめるべきか,距離を縮めて毎日走るべきかどちらなんでしょう?また,サポーターを膝に巻いて走っていますが,サポーターは付けたほうが良いのでしょうか?
 以上,よろしくお願いいたします。

[tomos]

 バッジョ様の症状は、おそらく「腸脛靱帯炎」と思われ、これは典型的なランナー膝です。詳しくは、腸脛靱帯炎のところで説明しています。以下に、ケアのためのチェック項目を列挙しました。

(1)走路
 固い路面、一方向に偏って回るコース、左右に傾斜した路面は腸脛靱帯炎を起こしやすい。

(2)シューズ
 脚に衝撃の少ないシューズ(初心者用に多い)がお勧めです。経験では、土踏まずのところが少し盛り上がったシューズがいいです。

(3)練習方法
 走るピッチが速すぎたり、距離が長すぎたり、過度に練習すると腸脛靱帯炎になりやすい。また、フォームでは「ももあげ」と「腰(へそ)を前に出す姿勢」を忘れないように。

(4)ストレッチング
 これが一番重要です。太ももの外側(腸脛靱帯)を伸ばすストレッチングを入念にしましょう。これは、左脚の場合でしたら、立位で両脚を交差させ(右足が前)、両腕を右側から足の方へ下垂させて、左の体側〜膝の外側が伸ばされる感じにします。反動をつけずに、ジワッとするのがコツです。最低でも15秒はしましょう。

 腸脛骨靱帯炎の本質は、炎症というより摩擦ですから、薬を塗れば治るというものではありません。サポーターは「膝関節がぶれなくする」効果は多少ありますが、適切なシューズを履き正しいフォームで走れば膝関節はぶれません。
 まずは走る距離を短くして、(1)〜(4)をチェックしましょう。毎日走る必要はありません。

(May/4/1998)

悩める大学院生 [98年 4月 25日 (土) 2時 34分]

 はじめまして。膝の障害についてご相談いたします。私は24歳、女性です。
 2/8にスキーで転倒しまして、右膝の内側を傷めてしまいました。症状は M.S さん(3/4相談)とほぼ同様で、転倒後翌日の診断で「内側側副靭帯を少し伸ばしたのでしょう」といわれました。その後、3週間たっても膝が完全に伸びず(20度程)、また完全には曲げられず(曲げきる直前で膝の内側に違和感が走る)、ある方向に曲げると痛みがあるという症状があり、内側半月板損傷の疑いで MRI 検査と関節鏡検査を受けることになりました。事故後38日目の MRI では、半月板損傷は確認できませんでした。また、59日目の関節鏡検査でも関節内に異常はみあたりませんでした。
 しかし、依然症状は残ったまま。ここで、主治医も私も頭を抱えてしまったのですが、主治医の熱心な原因探索の結果、内側側副靭帯付近で異所性の骨化が起こっていることが判明しました。直径5mm程のものが66日目にとったレントゲン写真に写っていたそうです。治療としては靭帯の炎症と痛みを抑えるために、痛み止めとステロイド剤の注射を1度し、あとはリハビリで治すというものです。
 現在、リハビリに通院して1週間になります。膝を伸ばすのは15度ほどまでは可能になったのですが、これ以上はとても強い力で押し戻されてしまい、また関節に痛みがはしり、どうしても伸びません。地道にリハビリを続ければ、この膝はきちんと伸びるでしょうか?  また異所性の骨化が、今後どんどん進んで大きくなってゆく可能性はあるのでしょうか?これを考える出すと夜も眠れません。(膝がうずいてよく眠れないというのが本当のところかもしれませんが...)
 主治医の先生はよく解説してくださり、大変頼もしいのですが、この症例はとても珍しいそうで、実際に診るのは初めてのようです。私は、生物系の研究者志望の大学院生なのですが、実験は立ち仕事が多く体力勝負。将来の学位取得や就職などに備えて、なるべくベストな状態にもってゆきたいと思っています。そこで、second opinion をいただけたらとご相談いたしました。
 骨形成といえば、今とてもホットな話題。異所性の骨化も学問的には非常に興味深いのですが...
 そうぞよろしくおねがいします。

[tomos]

 外傷後に、肩・肘・股・膝関節などの周囲に石灰が沈着することをしばしば経験します。これを異所性石灰化と呼んでいます。異所性石灰化は、外傷歴がなくても起こることがあります。外来でよく見かける異所性石灰化は、むしろ非外傷例(使い傷みや、経年変化による)が多く、特に肩関節に好発します。石灰化するのは、腱や靱帯です。肩の場合は、腱板の上腕骨への付着部周囲が変性(傷むこと)して石灰化し、激痛を伴います。
 悩める大学院生様の場合は、膝の内側にある「内側側副靱帯」が外傷で損傷し、その大腿骨の付着部周辺に石灰沈着を起こしたようです。比較的珍しい症例ですが、特殊な現象ではありません。
 鎮痛剤の投与、局所へのステロイドの注射等の治療を行い、数ヶ月のうちに石灰沈着が消退して痛みがなくなることが多いですが、頑固な症例では、沈着した石灰を手術的に摘出することがあります。
 最近は、エチドロネート(商品名はダイドロネル)という薬剤が異所性石灰化に有効とされ、tomos もしばしば使用しています。この薬剤は健康保険が適用されます。なお、このエチドロネート(ビスフォスフォネートの一種)という薬剤は、少量を毎日2週間投与するということを休薬期間をおきながら繰り返していくと、骨の吸収が抑制され、骨粗鬆症が改善する効果が認められます。つまり、「エチドロネートを少量投与すると骨量が増し、多量に投与すると石灰沈着が減少する。」ということになります。

(Apr/30/1998)

心配する父親 [98年 4月 20日 (月) 15時 17分]

 小学2年の息子が、2週間ほど前、「左膝が痛む(歩行時。正座は一応できる)」と言い出し、その時は2〜3日で軽快したのですが、昨日、こんどは「両膝が同じように痛む」と申します。(いずれも起床時から言い出す)
 若干O脚ぎみなのでそのせいなのでしょうか。成長痛というのがあり、先日みてもらった時かかりつけの医師は「心配ない」とのことで安心しておったのですが。近くに、専門医がなく、アドバイスがあれば教えてください。

[tomos]

 小学校2年生の男児が、軽度のO脚のために膝が痛むということは、まず考えられません。たいていは元気なお子さんで、とんだり走り回ったために、使いすぎて痛むというのが一番多いパターンです。しかし、思わぬ疾患が隠されている場合がありますので、以下に重要なものを記述しておきます。

 (1)化膿性膝関節炎
 細菌によって膝関節が化膿することがあります。この場合は、膝が赤く腫れ、熱をもちます。外見上からも、すぐに診断できます。
 (2)骨腫瘍
 膝の周囲は、骨肉腫(悪性)などの骨腫瘍のよくできるところです。痛みは常時あり、特に夜間などに痛がります。レントゲン検査等でわかります。
 (3)紫斑病
 風邪をひいた後などに、膝を痛がり、全身の皮膚にに紫斑(紫色の出血のあと)が出現します。腎炎になることがあります。小児科系の病気です。
 (4)ペルテス病
 元気な小児の場合、とんだり走り回ったりいているうちに、大腿骨の一番頭側の大腿骨頭というところに傷ができ、その部位の血行が阻害されるために大腿骨頭が壊死(えし、腐ること)になることがあります。これをペルテス病といいます。病気の部位は股関節ですが、最初に痛がる部位が膝であることがしばしばあります。股関節のレントゲンでわかります。

 その他にも、いろいろな疾患が思い浮かびますが、小児科、整形外科で診察を受けていれば、心配ないでしょう。tomos の場合、これらのどの疾患も否定的な時に、成長痛という病名を便宜上つけています。

(Apr/21/1998)

きんきらきん [98年 4月 14日 (火) 19時 07分]

 O脚で悩む者です。25歳女性。小学4年の頃から関節が痛くなり、少しずつ膝関節がずれてきました。手術で治すか、ストレッチ等の手術によらない方法が良いか迷っています。

[tomos]

 小児期のO脚は、くる病(ビタミンD不足)や Blount 病などの病気が原因のことがあります。この時期には骨はまだ成長段階にあり、装具などO脚の保存的治療でも十分効果が得られる場合があります。しかし、きんきらきん様のように既に成人に達し骨の成長が停止している場合は、O脚の矯正は手術によるしかないでしょう。O脚の人は、ランニングで腸脛靱帯炎になりやするく、その予防に腸脛靱帯のストレッチをしたりしますが、そういう意味ではストレッチングも効果があるかもしれません。ちなみに、tomos もO脚です。普段から下肢のストレッチングを十分行っています。重度のO脚は、膝の内側に偏って荷重がかかり、内側の関節軟骨をすり減らすため、手術で矯正することがありますが、軽度のO脚は日常生活にはあまり影響がない場合が多く、肥満に気をつける、大腿四頭筋をきたえる体操をする等のケアで十分な場合がほとんどです。
 O脚の矯正手術にも様々な方法がありますが、tomos は「高位脛骨骨切り術」を行っています。

(Apr/17/1998)

37歳 公務員 [98年 4月 10日 (金) 23時 22分]

 平成10年2月25日、スキーで何回か転んでいるうちに、左膝に力が入らなくなりました。その後スキー靴を脱ぐと立てなくなりました。その日の夜、自宅近くの整形外科で診察を受けると、膝蓋骨脱臼と診断され、関節から血液を10cc程抜いた後1週間ギプス固定しました。その後サポーターとマイクロ治療、SSP治療をしましたが、まだ膝に力が入らなく、胡座、正座はできません。何回もの触診では、靭帯損傷はないとのこと。MRI検査でも大きな所見はないとのこと。
 不安だったので、膝の診療が得意と同僚から聞いた「新大宮整形外科」で診察を受けると、触診で「前十字靭帯損傷」と診断されました。「完治するには、手術が必要」と説明されました。
 最初の整形外科では、診察に行くたび「靭帯は絶対大丈夫」と診断され、後者では、前十字靭帯損傷(完全に断裂している)と診断され、どうすればよいか迷っています。
 靭帯の損傷の触診は、熟練を要する技術なんでしょうか。

 現在の症状は、
1 階段の昇降 特に降りるとき不安定である
2 歩行中、ガクっとくるときがある
3 胡座や正座ができない
4 まっすぐ足を伸ばせない
5 膝の裏側(中)の筋?が膝を内側にもっていったとき、真っ直ぐに伸ばしたとき、痛みがある

今後どうすればよいか、よきアドバイスをお願いします。

[tomos]

 一般的にケガをした直後には、関節が腫れていて、また痛みのため十分な診察ができず、靱帯損傷がわからないことがあります。また、整形外科医といえども、膝は得意でないという先生もいらっしゃいます。(苦しい弁護...)
 新大宮整形外科の藤沢義之先生は、tomos と同じ奈良県立医科大学整形外科に在職されていた大先輩で「膝関節の専門家」です。tomos も面識があります。藤沢先生は、知る人ぞ知る膝関節学会の重鎮で、その道の達人です。藤沢先生をご信頼なさって全く問題ないと存じます。(「医療機関のご紹介は原則として行っておりません」と言った矢先ですが。<汗>)。症状も前十字靱帯損傷の典型です。
 「Q&Aライブラリー」に前十字靱帯損傷と半月板損傷の合併の記載が、また「整形外科手術説明書」に膝関節鏡検査前十字靱帯再建術半月板切除術半月板縫合術の説明がございます。ご参考になさってください。

(Apr/11/1998)

E.Y. [98年 4月 10日 (金) 2時 04分]

 はじめまして、ホームページを拝見させて頂きました。実は、年内に右膝の手術を考えています。
 16歳の時に交通事故に遭い、その1年半後、「右膝関節内の骨のかけら(脛骨上部を剥離骨折)を素材はわからないのですが、ワイヤーのようなもので脛骨に引っ張りくくりつける。」という手術をしました。が、2年程前にレントゲンをとった結果、ワイヤーが切れていたのです。最近、特に痛みを感じているので、ワイヤーを取り除く手術を受けることにしました。ただ、「手術後11年たっているので、ワイヤー付着部(脛骨上部内側)に骨が覆いかぶさっていて、その骨を少々削るかもしれない。」とも言われました。
 そこで伺いたいのですが、このような手術の場合の入院日数と費用は、どれくらいかかるのでしょうか?また、私は東京在住なのですが、こちらでおすすめの病院は、ありますでしょうか? どうぞ宜しくお願いします。

[tomos]

 E.Y. 様の11年前のおけがは、おそらく「膝の前十字靱帯の脛骨の付着部における剥離(裂離)骨折」だと推測されます。前十字靱帯がその中央で切れずに、脛骨の付着部で骨ごと剥がれたのでしょう。(あるいは、後十字靱帯かもしれません。治療法は同じです。)この治療法に関しては、「TOMOS整形外科手術説明書」の「前十字靱帯損傷(脛骨裂離骨折)観血手術」に説明があります。ところで、けがをして1年半も経ってから手術したのでは、剥がれた骨は完全には元の位置に戻りませんが、その剥がれた骨は脛骨にちゃんとくっついたのでしょうか?(しっかりとくっつかない確率の方が大きいと思いますが...)
 固定に用いたワイヤーが切れることはよくあります。また、ワイヤーは皮膚の直下の脛骨(すね)のところに貫いてきて結び目を作りますが、おそらくその結び目が骨に埋まってしまったのでしょう。ところで、ワイヤーが単に切れただけでは、痛みなどの症状は起こりません。ワイヤーの切れ端が膝関節内に顔を出して、何か症状の原因になっているのでしょうか??。それよりも、「前十字靱帯の緩み」による症状、「半月板損傷」を合併していてそれによる症状等が生じている可能性があります。おそらく抜釘術(ワイヤーを抜く手術)の時に膝関節鏡検査を同時にしていただく予定をされているのだと思いますが、その検査で判明するでしょう。また「半月板切除術」、「半月板縫合術」、「前十字靱帯再建術」のところもご覧ください。
 次に治療の費用に関してですが、入院費用は全く同じ治療を健康保険を使って実施しても、治療する病院の設備・スタッフの充実度などによって健康保険の保険点数が異なる部分があります。大ざっぱに、約10日間入院して、腰椎麻酔により「抜釘術」と「膝関節鏡検査」を実施した場合、治療費は約30万円に、社会保険の本人(2割)で(食事の自己負担等以外の)自己負担額が約6万円、家族(3割)や国民健康保険(3割)で自己負担が約9万円になると思います。なお(食事の自己負担等以外の)自己負担が1ヶ月に6万3600円を超えた分は、後で請求すれば健康保険から払い戻しがあります。つまり、毎月それ以上の自己負担はいらないわけです。
 最後に医療機関の紹介ですが、「相談コーナー」の「ご注意」にも記載いたしましたが、申し訳ありませんが当ページでは医療機関のご紹介は原則として行っておりません。当ページの「リンク集」にある「医療機関の検索」の各サイトから、ご自分でお調べください。(もっとも、tomos は関西の人間なので、関東の病院のことはわかりかねますが。)

(Apr/11/1998)

37歳、男、テニスプレーヤー [98年 4月 02日 (木) 12時 50分]

 実は、昨日膝のMRI検査の結果、右膝内側半月板の水平断裂と診断されました。関節鏡による半月板の部分切除手術を勧められました。ただ、10日間の入院が必要との事で、今すぐと言う訳には行きませんが、タイミングを見てやってもらおうと思っています。(手術に適した季節と言うのは有りますか?)
 とりあえず、足底板を作ってもらいました。痛みが出なければ、それは症状が悪化していないと思って良いと言われましたので、筋力を強化して行こうと考えています。効果的な方法など教えていただけますでしょうか?(エアロバイクの購入も考えています)
 また、手術の事など詳しく知っておきたいと思っています。(安全性や、術後の回復度など)
 主治医はとても良い先生ですが、もう少し他のご意見も有るようでしたら参考にしたいと思いまして、質問させていただきました。どうぞよろしくお願いします。

[tomos]

 半月板損傷に関しましては、「TOMOS 整形外科手術説明書」に「膝関節鏡検査」、「鏡視下半月板切除術」、「鏡視下半月板縫合術」の解説があります。
 患者様の半月板水平断裂は、自然に治るということはありません。断裂している部位が血流のないところで、なおかつ半月板を二枚におろしたような断裂の仕方だからです。スポーツや日常動作で、損傷(断裂)が徐々に拡がることはあっても、治ることはまずないと思います
 手術で半月板を部分切除すれば、半月板のひっかかる症状はなくなります。しかし、半月板は膝のクッションのような働きがあり、無駄な組織ではないので、部分的とはいえ切除すれば、将来的には、膝の変形性関節症変化(すり減って変形すること)を促進することになります。ただ、手術をしないで半月板のひっかかる症状が続けば、そのこと自体、膝関節の半月板・関節軟骨をかなり傷めてしまいます。
 結局、半月板を傷めないように大事に使うのが一番だと言うことですが、傷んでしまった以上、最善の策をお考えになるのがいいと思います。スポーツや日常生活に支障があるような症状でしたら、手術がベターでしょうか。
 手術は、患者様のご都合で、いつされてもいいと思います。ただ、夏休み・春休みなど、手術希望の多い時期というのはあります。また、春・秋の学会シーズンはドクターが忙しい病院もあります。
 半月板損傷がある場合、大腿四頭筋という太ももの筋肉が特に弱くなります。そのため半月板損傷の患者様には、大腿四頭筋を鍛えるリハビリを十分に行っていただいています。ただこのリハビリは膝を屈伸する運動が多く、そのリハビリ自体、半月板にストレスをかけてしまいます。エアロバイクなんかは特にそうです。このリハビリも、手術後になさった方が無難かもしれません。足首におもりをつけ、膝を伸ばしたまま脚を挙上するSLR(straight leg raising)という運動なら、膝関節に負担がかかりません。

(Apr/3/1998)

スパンキー [98年 3月 20日 (金) 1時 39分]

 お世話様です。今回は自分のケガのことで相談にのって頂きたく、こちらに書き込みました。
 今現在、私は25歳の男性ですが、膝のケガで悩まされています。今の医者の診断では「強度の腸脛靱帯炎」、「内側半月板損傷」、「棚障害」と診断されています。
 昨年の初めから膝の痛みに悩まされ、その年の5月、病名不明のまま膝関節鏡検査を行い外側の滑膜を切除しました。しかし、その原因がわからないまま、結局2ヶ月後には再発してしまいました。その後、いろいろな医者を転々としましたが、結局どこもはっきりとした原因を見つけることが出来ずにいました。
 ところが、ある病院で「内側側副靱帯が延びているのではないか」ということで、昨年10月に二度目の手術・キブス固定を行いました。その後リハビリを行いましたが、いっこうに膝の痛みが治まらないので、二度目の手術をした病院で再び診察を受けたところ、先に述べた3つが原因ではないかと診断されました。
 しかし、その時点では太ももの周径の左右差が6センチもあり、「またここで手術をしたらその後のリハビリがさらに大変になる」といわれ、プールでのリハビリ、エアロバイク、ストレッチ、また痛くない範囲でのマシントレーニング等を行い、左右差が2センチのところまで回復しました。
 しかし、最近診察したところ、「どうもそれ以外にも膝の中に何か原因があるのではないか」と担当医が言い、他の病院を紹介されました。しかし、その紹介された病院は、実は以前に診てもらった病院の一つ(担当は紹介された先生ではありませんでしたが)で、「とりあえずステロイドを打ってみよう!」という感じの病院だったので、どうしても乗り気ではありません。
 さらには、現在の担当医も最近になり言うことが幾度となく変わり、どうも何かが変わりはじめています。現時点では、どうすればよいのかわからない状態です。
 そこで先生にお聞きしたいのですが、仮に先の3つのことが原因だとして手術をしたら完全に治るのでしょうか。そしてリハビリ後、野球、トライアスロンなどのスポーツに復帰することは可能でしょうか。そして最後に、患者が医者に対して信頼感が持てなくなった場合、どうしたらよいのでしょうか。今のままでは怖くて、怖くてしょうがありません。かといって、また一から出直すにしても、以前に何軒も何軒も医者を回った時のことを思い出すと、どうしても、、、、。
 お忙しいとは思いますが、どうかアドバイスをお願いします。

[tomos]

 スパンキー様には、専門医による診察をお勧めしました。
 実際に診察してみなければ何とも言えませんが、お話を伺った限りでは、半月板損傷を最も疑います。これに関連した「膝関節鏡検査」、「鏡視下半月板切除術」、「鏡視下半月板縫合術」の解説が「TOMOS整形外科手術説明書」にあります。

 次に、腸脛靱帯炎と棚障害に関しても少し説明をしておきましょう。

 まず腸脛靱帯炎についてご説明いたします。
 腸脛靱帯は太ももの外側にある靱帯で、腸骨(ズボンのバンドがあたる骨)から、膝の外側のスネの骨までつながっています。霊長類の中でも直立二足歩行するヒトにのみ存在します。
 ランニングをすると、この腸脛靱帯が膝の外側の大腿骨の出っ張り(大腿骨外顆)との間で摩擦を起こし、痛みを生じることがあります。摩擦で痛いわけで、厳密な意味での炎症ではありませんが、これを傷脛靱帯炎と呼んでいます。ランナーに好発する膝の傷害(ランナー膝)の一種です。
 O脚のランナーに多く、走りすぎたり、速度が速すぎると起きやすくなります。不適切なシューズや、走路の問題からも生じます。
 治療は、まず第一に腸脛靱帯のストレッチングが効果的です。やり方はコーチ、スポーツドクター等から教わってください。予防のためにも、特にO脚の人は、ランニングの前後に入念に行いましょう。また、練習量が多い人は減らし(過ぎたるは及ばざるが如し)、シューズや走路の選択も大事です。
 難治性の場合、腸脛靱帯を延長する手術もあるそうですが、tomos は経験がありません。
 tomos も実はO脚で、ランニングの後に腸脛靱帯炎をよく生じていましたが、腸脛靱帯のストレッチングを十分行うようになってからは、あまり発症しなくなりました。シューズ、走路、練習内容にも気をつけています。

 最後に棚障害についてご説明いたします。
 関節の中は関節腔といって、袋状の一種の閉ざされた空間になっています。その関節の袋(関節包)の内張りを滑膜といい、部屋でたとえると「じゅうたん」のようなものです。膝関節では滑膜は所々ヒダ状になっているところがありますが、膝蓋骨(お皿)の内側下方にある滑膜ヒダを、その形状から「棚」と呼んでいます。
 棚障害とは、棚が分厚すぎて、相対する大腿骨関節面の軟骨とこすれ、痛みを生じることをいいます。運動後、階段の上り下り、立ち仕事などで痛みを生じることが多いです。関節鏡検査によって、分厚い棚が大腿骨関節面の軟骨を傷めているのが観察されれば、棚障害と診断されます。治療は、関節鏡検査時に、棚を切除してやります。

(Apr/2/1998)

M.S [98年 3月 04日 (水) 11時 24分]

 はじめまして。私は32才の女性です。
 ところで、お聞きしたいことは靭帯のことです。2/7の日にスキーで転んで左ひざ内側の靭帯をいためてしまいました。2/9に地元の整形外科にいき、湿布や包帯をまいてもらいました。少し出血していたといい、注射器で血をほんの少しとってもらいました。その時の診断は、「2月は走ったり膝を無理やり伸ばしたり曲げたりしないように。3月になったら少しづつ動かそう。」でした。
 その後会社に行ってるので、痛い足をひきずりながら、階段や電車に立ったまま乗ってました。包帯はかぶれてしまったので、はじめの2日しかしてませんでした。湿布は2週間ぐらいしてました。
 はじめの1週間はみるみるうちに自分でも治っていくのがわかりました。左脚がひざから下にかけて、裏側がすべて歩くだけで痛かったのが(脚をひきずっていました)、1週間でだいたいなくなりました。そこからはあまり進歩せず、3週間たったいまの症状は、ひざがまっすぐに伸びない、完全に曲げられない(正座などはもってのほかです)、階段の昇り降りの際、いまだに痛みが走るという症状です。
 医者は「3週間で膝が伸びないのはそろそろおかしいね。」といい、「とりあえず3月になったら運動してみて」といわれ、ひざの運動を 2,3種類教えてもらいました。
(1) こういう状態で運動をしても平気なのでしょうか。ちょっとは無理やり伸ばす曲げるをしてもよいのですか?
が、それでだめな場合は「切って膝の中を調べるしかない」といわれたのですが、
(2)普通靭帯をいためた場合、どれくらいで治癒するものなのでしょうか。私の治癒期間は確かに遅くおかしいのでしょうか。
(3)また、調べるために切ると傷あとも残るのでしょうか。調べるためには切るしか手だてはないのですか。
 だんだん、心配になってきてしまい、ご相談しました。よろしくお願いします。

[tomos]

 膝の内側にある靱帯を、内側側副靱帯と呼んでいます。スキーなどのスポーツで膝がむりやり外反(外側にひねられること)されると、この靱帯が損傷します。内側側副靱帯損傷は、日常診療でよく遭遇する膝の捻挫です。捻挫の程度により、1度:内側側副靱帯の部分断裂、2度:内側側副靱帯の完全断裂、3度:内側側副靱帯断裂と内側半月板や前十字靱帯などの合併損傷、と3段階に捻挫の重傷度を分類しています。
 治療法は、大ざっぱに言って、1度・2度の捻挫では保存的治療を、3度では手術的治療を選択しています。
 1度・2度の捻挫では昔はギプス固定を約3週間することが多かったのですが、最近は包帯やサポーターによる固定にしています。これは、ギプス固定だときっちりし過ぎて、下肢の筋力が弱ったり、膝関節の動きが悪くなったりといろいろ不都合があるため、最近はなるべく軽い固定で早期に歩いたり、膝関節を動かしたりしようという傾向に変わってきているからです。M.Sさんの場合も、おそらく1度・2度の捻挫(靱帯損傷)の診断で、こういった治療をされているのだと思います。痛いのに我慢してまで運動をする必要はないですが、多少の痛みには目をつぶって練習しましょう。
 捻挫の固定期間はだいたい3週間ですが、日常生活が何とかこなせるのは受傷6週後、リハビリの後スポーツに完全に復帰できるのは受傷3〜6ヶ月後になる場合が多いです。なお、きちんとギプスやサポーターによる固定の治療ができても、多少の靱帯の緩みが残ります。
 1度・2度の捻挫の治療中に、歩いていて膝がガクッとなったり、曲げ伸ばしでひっかかったりする症状が出現した場合は、3度の捻挫が疑われます。すなわち、内側半月板や前十字靱帯の合併損傷の疑いがあります。この場合は、膝関節鏡検査を実施して関節の中を観察し、診断しています。内側半月板や前十字靱帯の合併損傷が見つかれば、その治療が必要な場合があります。
 膝関節鏡検査は、膝の周囲に小切開を加えて、内視鏡で関節内を観察する検査です。検査では6〜8mmの小切開を2〜3カ所加えますが、心配するような目立つ傷あとは残りません。
 なお最近は、MRI検査で体に傷つけることなく診断することも可能になってきています。

(Mar/7/1998)

k.o [98年 2月 18日 (水) 18時 56分]

 はじめまして。私は、現在36才になります。
 さかのぼってお話しいたしますと、10年位前に運動不足を感じスポーツクラブへ入会し、毎日のように通い、おもにウエイトトレーニングをしていました。スキーやテニスなどにも目覚め、暇があると通っていましたが、もともと膝があまり丈夫でなかったようで、4年前に激痛を感じ医者へ行ったところ関節鼠と診断され、即入院。
 手術(以前から膝の具合は悪く両足膝蓋軟骨軟化症という診断はされていました)、また手術の時に検査も兼ねるということでしたが、絶対膝は開けない事を条件に入院しました。が、実際には関節鏡で検査したあと左膝の外側を5センチ程切られ、大腿四頭筋が強すぎるから少し切り離し、関節のところの膜も切り離したと言われ、50日間入院していました。その後の具合もあまり良くなく、今だに以前の様な筋力が戻りません。
 あまり動かなくなったせいか、体重を落としてもそのあとのリバウンドが激しく、手術をする前に比べ15キロも増えてしまいました(私もいけないのですが)。今、右足も引っかかるような痛みが出てきているのですが、この体重のままだと気が引けて、少しでも体重を落としてから医者へ行こうと思っているのですが、効果的な方法などありましたらご指導お願いいたします。
 私は、フリーで仕事をしています。時間はかなり自由が効きますが、食事などはかなり不規則です。朝食だけはとらないと体が起きないので欠かしません。行動は、多いときには一日中歩き回っていることがあります。実際、病院で診てもらっても納得できるような話を聞くことができません。づらづらと長く書いてしまいましたが宜しくお願いします。

[tomos]

 両足をそろえて立ったとき、両膝の間に隙間がある脚を、その形態から「O(オー)脚」、その逆に両膝をそろえると両足の間に隙間ができる脚を「X(エックス)脚」と呼んでいます。k.o 様の場合はおそらくX脚なのでしょう。
 こういった膝では、膝蓋骨(おさら)が外へずれやすく、膝蓋骨と大腿骨の間の関節のはまり具合が悪いため関節軟骨が傷められ、「膝蓋軟骨軟化症」という状態になることがあります。k.o 様の場合は、外傷やスポーツによって傷められた関節軟骨が遊離体となり、成長し(関節軟骨は血が通わなくても、関節液で栄養され成長する)、関節の中を動き回る「関節ネズミ」という状態になったものと推測されます。
 4年前の手術では、関節ネズミを摘出すると同時に、膝蓋骨が外側にずれないように膝蓋骨の外側の「膜」を切離していただいたのでしょう。
 体重が重いほど膝蓋骨には屈伸時などに余計にストレスがかかりますから、肥満は大敵です。「TOMOS 現実的な正しい減量法」を参考にしてください。また、太ももの前面(大腿四頭筋)のストレッチングも症状の軽減に効果があります。
 X脚は、正常な脚やO脚に比べてスポーツによる傷害が出現しやすいと言われています。ウエイトトレーニングなどのきつい運動は傷害を起こしやすく、また何か目標がなければ長続きしません。日常生活に自然な形で取り入れた運動は長続きし、傷害も少ないでしょう。人は年をとり、人体も一種の消耗品です。運動の本当の意味を考え、末永く継続できる運動を選択するべきでしょう。
 tomos もスポーツクラブに通っていますが、主にエアロビクス(持久力)系の運動と、ストレッチング、マシンを利用した安全な筋力トレーニングをしています。週に2回程度通っていますが、体調の悪い時や行きたくない時は休みます。
 ちなみに tomos はO脚です。ランニングにより腸脛靱帯炎を起こしやすいので、ストレッチングを入念に行っています。

(Feb/19/1998)

H.S [98年 2月 16日 (月) 15時 13分]

 25歳の男性です。同い年の彼女のことで相談があります。8年ほど前に左の膝を捻挫して以来、雨の日、寒い日には膝の裏が笑うような激痛が走るそうです。スポーツはエアロビクスを週に1回やっている程度ですが、そのときには痛みは感じないとのことです。
 寒い日、雨の日でも膝が痛くならないようにするにはやはり何らかの手術が必要なのでしょうか。彼女があまりにも痛がるので心配なのです。よろしくお願いします。


[tomos]

 8年前の捻挫の時、どこかの医療機関で診察を受けられたのでしょうか?。靱帯を切ったり、半月板を傷めたりしていないのでしょうか?。知らせて下さった症状だけでは、なかなか診断いたしかねます。また、体重は重すぎませんか?
 ただ、エアロビクスで痛くないとのことですから、靱帯や半月板の損傷よりは「膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)」の可能性があります。
 これは病名はおおげさですが、要するに、「おさら」と大腿骨との間の関節のはまり具合がしっくりいかなくて、「おさら」の(表面が大腿骨とこすれる)関節軟骨が傷んでいる状態です。若い女性に多いです。 これは、太もも(大腿)の前面のストレッチングを十分行うと、症状が軽くなります。また、これ専用の医療用サポーターもあります。
 もしこれであれば、とりあえず手術はいりません。「おさら」の発育が悪くて、頻繁に「おさら」が脱臼する(はずれる)場合などは、手術をしたほうがいいですが。
 いずれにせよ、一度整形外科医に診ていただくのがいいでしょう。

(Feb/19/1998)

T.I [98年 2月 05日 (木) 0時 10分]

 tomos 先生、初めまして。妻の怪我についてお伺いいたします。先月24日にバイクで走行中に転倒し、右膝蓋骨骨折、靱帯損傷という大怪我を負ってしまい、病院では全治6ヶ月と診断されました。現在、太ももからつま先までギプスを巻いていますが、とれるまでどの位かかりそうでしょうか。(主治医はハッキリとした返事をしてくれません。妻を見ていると辛そうなので…。)
 妻は生まれて初めての大怪我で困惑しています。現在は入院していますが、来週にも自宅療養ということで退院できるとのことですが…。自宅療養での注意点などありましたら、宜しくお願い致します。

[tomos]

 電子メールでお伺いしたところ、膝蓋骨は完全に骨折し少しずれていて、膝の靱帯は合計4本あるうち、前十字靱帯と外側側副靱帯の2本を損傷していらっしゃるとのことでした(関節鏡検査を実施済み)。
 まず、膝蓋骨骨折についてですが、この骨は血流が良く比較的治りやすい骨です。ギプスで治すということですから、骨折の転位(ずれ)も大きくないのでしょう。レントゲンを拝見していないので明言できませんが、tomos ならギプスを4〜6週間巻くでしょうか。なお、骨折が膝蓋骨の関節面(表面が軟骨で覆われた大腿骨とこすれる面)にかかっている場合は、多少の関節の症状(屈伸時の痛みなど)が残る場合があります。
 奥様の場合は、問題は靱帯損傷の方で、あとあと障害が残る可能性があります。関節鏡検査の時に簡単な手術もなさったとのことで、おそらく半月板損傷を合併していて、半月板損傷部の部分切除術を受けられたのでしょう。膝関節の Q&A の中に、前十字靱帯損傷と半月板損傷の合併症例について詳しく説明しましたので、そちらを参照してください。(外側側副靱帯損傷は前十字靱帯の再建と同時に治療します。)
 自宅療養中の注意点ですが、ギプスで固定しているときも、太ももやふくらはぎの筋肉が衰えないように、筋肉に力を入れる練習をしておきましょう。

(Feb/8/1998)

M.K [98年 2月 02日 (月) 22時 18分]

 35歳の男性です。1週間前に転倒し、膝の靱帯及び半月板を傷めてしまいました。お医者の話だと靱帯移植手術をして直すとの事ですが、ここで質問があります。
1.手術を行った場合もとどおりに治るのでしょうか?
  膝が曲がらなくなったり、伸びなくなったりしないのでしょうか?
  正座などもできるのでしょうか?
2.治るのにどのくらいの日数がかかるのでしょうか?
  会社員なので、どの位休みを取ればいいのでしょうか
3.手術方法は、どのようにおこなうのですか?
  何時間位かかるのですか?
4.手術後どのような治療を行うのですか?
5.手術後どの位で歩ける様になるのですか?
宜しくお願いします。


[tomos]

 まだお若いので、これからも活動的な生活をなさるのなら、しっかり治療されて、なるべく障害を少なくされるのがいいかと存じます。

<治療方針>

A)膝の前十字靱帯のみの断裂
 この場合、とりあえず手術をしないで膝の不安定性(ぐらつくこと)による症状で生活に支障がでないか様子を見ます。やはり日常生活や仕事・スポーツに支障があるということであれば、後日、靱帯を再建する手術を実施することがあります。

B)半月板のみの損傷
 この場合であれば、必要があれば(関節鏡視下または観血的に)手術をして半月板を切除または縫合します。

 患者様のように、A)、B)を合併した場合は少し方針が変わります。

 半月板を治療しただけでは、前十字靱帯不全による膝の不安定性のため再び半月板を傷つけるおそれが残ります。そこで、私どもの病院では、半月板の治療と同時に、前十字靱帯の再建術を行っています。

 ご質問の手術の効果ですが、手術をして膝の不安定性が少なくなれば日常生活やスポーツなども支障なく行えることが期待されます。手術後の膝の可動域(曲げ伸ばしの角度)については、再建した靱帯の状態、リハビリの進展状況にもよりますがおおむね良好です。正座はできる人とできない人がいます。

<手術>

 どこから移植する靱帯を採取するかで何種類もの手術法がありますが、比較的ポピュラーなクランシー法(膝蓋腱を用いる方法)について述べます。

 手術は関節の炎症が落ち着く受傷後3週以後に行います。
 手術は全身麻酔で行います。

 手術ではまず膝蓋骨(おさら)と脛骨(すね)の間にある膝蓋靱帯を、両端の骨がついたまま採取します。大腿骨(ふともも)と脛骨にそれぞれトンネルをあけ、元の前十字靱帯のあった位置に採取した靱帯を移植します。移植した靱帯の両端についた骨は、それぞれ大腿骨と脛骨のトンネルにネジで固定します。傷んでいる半月板は切除または縫合します。
 手術後しばらくギプスをまきます。(ギプスは約1〜3週間で除去予定です。)

 移植した靱帯の強度が増すまで6〜12ヶ月かかると言われています。そのため手術後約6ヶ月間は装具を装着する必要があります。

 固定に用いた金属は、術後約12ヶ月で手術をして取り除く予定です。

 手術時間はおおむね靱帯再建術だけの場合で2〜4時間、半月板の治療を同時に行う場合は4〜6時間ぐらいでしょうか。

<手術後>

 早ければ手術の翌日から松葉杖で歩けます。
 リハビリは私どもの病院では手術前から始めています。
 おおむね、ギプスがはずれるまで1〜3週、
 松葉杖がいらなくなるまで2〜3ヶ月、
 装具(丈夫なサポーター)がはずれるまで6ヶ月、
 ジョギングができるようになるまで6ヶ月、
 重労働・スポーツに復帰できるまで1年程度かかります。
 休職期間は仕事の内容によって様々です。

(Feb/8/1998)

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tomos<since Jan/17/1998>last updated Feb/4/2001