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〜Aug/1998 脊椎 Q&A ライブラリー

しし丸 [98年 8月 16日 (日) 13時 17分]

 はじめまして。私は、東京都在住の35才の主婦(身長163cm、体重46Kg)です。
 日頃から腰痛に悩まされておりましたが、たまにマッサージやカイロプラスティックにいく程度で楽になっておりましたので、整形外科での検査・診察等は受けたことがありませんでした。
 6月中旬、歩くのがつらいほど腰が痛くなりましたが、そのときもカイロで治ると考え、かかり付けのカイロにいったところ痛みがひどくなり、2日後には両足の痺れにより立つこともできなくなったため、近くの総合病院に入院しました。
 すぐに検査を受けたところ、「原因は腰椎椎間板ヘルニアにより、下肢の神経が麻痺していたため」との事でした。その日のうちに髄核摘出手術を行いました。手術後1週間ほどで左足は動くようになりましたが、2ケ月近く経った今も右大腿部の痺れと右足つま先の麻痺がとれず、装具を付けてのリハビリを実施しています。医者からは「時間をかけて神経の回復を待つしかない」といわれており、近々退院する予定です。
 退院後は、1週間に1度通院してのリハビリといわれていますが、それだけでよいのか不安をかんじています。私と同様な事例があれば、その方の退院後のリハビリ方法ならびに装具を付けずに歩行できるようになったときまでの期間などをお教えください。
 ご多忙中誠に恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

[tomos]

 腰椎椎間板ヘルニアによって神経が圧迫され、歩けないほどの下肢の麻痺、排便・排尿障害が出現した場合は、緊急に髄核摘出術などの手術が行われることがあります。しし丸様の場合は、幸いにもすぐに手術を受けることができ、現在、右下肢装具をつけての歩行が可能になられたようです。
 右足は、おそれく下垂足といって足首や足趾(足のゆび)が甲側に上がらない状態と思われます。これは、腰椎の4番目と5番目の間の椎間板ヘルニアにより、第5腰神経が圧迫されて起こることが多い症状です。
 手術後の麻痺の回復についてですが、椎間板ヘルニアにより重度の神経の圧迫があった場合は、多かれ少なかれ「しびれ」、筋力低下などの麻痺が残ることが多いです。しかし、手術後6ヶ月間は徐々にではありますが神経の麻痺症状が改善する可能性があります。
 下肢の麻痺の場合は歩くことがリハビリですから、特別なリハビリをなさらなくてもいいでしょう。ただし、腰椎椎間板ヘルニアがあって手術も受け手いらっしゃるので、腹筋を鍛えたりする腰痛体操や日常的なケアが必要なのは言うまでもありません。体操はリハビリで教わった方法で毎日実行しましょう。

(Aug/20/1998)

ふる [98年 7月 17日 (金) 23時 48分]

 1月23日、自転車に乗っているとき車に跳ねられて、首・腰が鞭打ち症になりました。半年経ちますが首・腰が痛みます。整形外科に行っても、「これ以上は治療がない」といわれました。もう少し腰を良くしたいのですが、良い方法があれば教えてください。

[tomos]

 自動車に乗車中、後方から追突され、頸部が鞭(むち)のように前後にしなって捻挫した場合を「むち打ち症(損傷)」と呼んでいるようですが、これは正式な医学用語ではなく、診断書等には「頸部(頸椎)捻挫」、「頸部(頸椎)挫傷」などと書いています。なお、一般に腰部では「むち打ち症(損傷)」とは言いません。「腰部(腰椎)捻挫」、「腰部(腰椎)挫傷」などと呼んでいます。ここでは、主に頸部(頸椎)捻挫について述べさせていただきます。なお、以下の説明には脊髄損傷や脊椎骨折を合併した場合を含みません。
 tomos の印象では、70%〜80%の頸部捻挫の患者さまは、3ヶ月以内に症状が良くなっています。残りの20%〜30%が長びいているようです。また(加害者のいない)単独事故による頸部捻挫やスポーツ外傷による頸部捻挫の場合、治療期間が3ヶ月以上かかるような方はあまりいらっしゃいません。万が一、頸椎や腰椎に(神経症状のない)骨折があっても3〜6ヶ月で完治しています。また、元来頸椎に(症状の有無にかかわらず)椎間板ヘルニアや(加齢等による)変形、狭窄症等がある方は症状が長びくようです。また、高齢者ほど長びくように思います。それから、追突の激しさと治療期間は必ずしも比例していないようです。
 症状が長びいている患者さまの訴えで多いのは、頸部〜肩の筋肉(僧帽筋)の凝り、いわゆる「肩こり」やそれに伴う頭痛(筋緊張性頭痛)などです。これは、事故後に長期間にわたり頸部を過度に安静にしていた場合に多いようです。頸部捻挫の場合、頸部をカラーなどで安静に保つのは3週間前後までにすべきでしょう。その安静期間が終わってもまだ頸部の凝り等の症状が残っている場合は、僧帽筋という肩の筋肉の運動をしたり暖めたりしています。頸椎の牽引を行う場合もあります。「筋肉の凝り」という症状には、その筋肉の局所的条件(ケガや姿勢など)以外に精神的ストレスなども自律神経を介して影響しています。「患者が『むち打ち損傷』について無用な不安を持っている」、「被害者自身の性格や持病の問題」、「加害者・損保側の被害者への対応の問題」、「賠償問題」、「マスコミや隣人の誤った情報による過大な不安」なども精神的ストレスを高める要因となり、治療が長びく原因となり得ます。
 医療機関にリハビリ等のために一生懸命通院して治療に専念するのは、けっこうストレスです。これに対してスポーツなどによる気晴らしは、筋肉を動かすことによりその筋肉の血行をよくし、またストレスも発散させてくれます。散歩程度の軽い運動でもけっこうですから、無心に体を動かすのがいいようです。
 首や腰の不快感は日常生活動作にかなり影響し、憂鬱なものです。でもくよくよ考えても余計に治りにくくなりますから、仕事・趣味・スポーツなど本来の自分の生活やリズムを取り戻すように心がけましょう。なお、単なる頸部捻挫のために2年も3年も通院している方はいません。つまり、どんなに遅くてもそれまでには治るということです。(腰の場合も同様にお考え下さい)

(Jul/20/1998)

さらりーまん [98年 6月 19日 (金) 0時 09分]

 仕事で車ばかり乗っているせいか、最近腰の痛みをかんじることも多いです。何かよい方法はないでしょうか。あのタクシーの運チャンが付けているような竹細工のシートはツボを刺激して効果的なのでしょうか。おっさん臭いのですが、愛用しております。
 わたしは・・誰でしょう。

[tomos]

 自動車のシートに座っている姿勢は人様々ですが、長時間乗車しているとたいていの人は腰痛を生じます。tomos は、乗車中も背骨のS字カーブを保つため腰とシートバックの間にクッションをいれたりしています。同じ姿勢を続けるのも腰痛の原因になりますから、乗車中も腰の位置を時々変えたりしています。
 竹細工のシートは夏向きで涼しそうですね。あれは背中の圧迫される場所が分散・移動するので、背中の筋肉の血行不良を予防する働きがあるように思います。腰痛予防にいろいろ工夫するのは有意義なことです。
 なお、車ばかり乗っていると運動不足になります。仕事のせいにしないで、ご自分で何か健康にいいことをしましょう。

(Jun/20/1998)

ベ−タ [98年 6月 18日 (木) 23時 05分]

 以前ご相談させていただいたベータです。お礼のメ−ルも出さずに失礼いたしました。
 左の首・背中・腰・腹部に痛みやだるさがでるので整形外科に行ったところ、「脊椎側弯症により左側筋肉に負担がかかっているのが原因だ」と診断されました。現在のところ、「治療としては首の牽引と電気治療で筋肉を柔らかくして痛みを和らげる程度で、根治治療は難しい」と言われました。
 脊椎側弯症は治らないのでしょうか?この病気のことや、日頃の生活でのアドバイスなどをお教えいただけますようよろしくお願いいたします。

[tomos]

 前回4月25日のご相談の時は、γーGTP値が高いとおっしゃっていたので、「場合によっては腰痛以外に肝臓病等の可能性もある」という tomos の回答でした。今回は整形外科を受診され、「脊椎側弯症を指摘された」とのお話です。以下、側弯症について説明いたします。

 脊椎側弯症(背骨が曲がっていること)には(A)見かけの姿勢異常と(B)本当に背骨が曲がっている場合があります。

(A)見かけの姿勢異常には、(1)姿勢が悪くて背骨が曲がって見える場合、(2)脚の長さに左右差があって、その代償のために背骨が曲がっている場合、(3)椎間板ヘルニアによる神経の圧迫などがあり、神経の痛みが出ない方へ背骨が曲がる場合などがあります。これらは、真の側弯症ではありません。

(B)本当に背骨が曲がっている側弯症には、多種多様な原因による側弯症が含まれます。
 特発性側弯症は一番多いタイプで、思春期の女子に初発することが多い側弯症です。原因は不明です。学校検診でも側弯症の検診をしています。ごくまれには、先天性側弯症といって、生まれつき背骨が曲がっていることもあります。
 以下に、その他の側弯症をきたす様々な疾患を列挙してみましょう。
 脳性麻痺や脊髄の病気、先天性筋疾患などの神経・筋肉の病気があると筋肉の緊張のアンバランスが生じ、成長と共に背骨が曲がることがあります。
 小児期に発病する側弯症には、その他に、先天性代謝異常などのために体の組織の脆弱性(弱いこと)があって成長と共に背骨が曲がるケース、くる病(ビタミンD欠乏)や先天性骨形成不全症などにより骨が弱くて側弯症を生じるケース、神経繊維腫症に伴う側弯症などがあります。
 一方、成人後に生じる側弯症には、背骨の骨折、脊椎カリエス(背骨の結核)、慢性関節リウマチ、変形性脊椎症(背骨の老化)などに伴うものがあります。

 側弯症の角度(一番曲がっているところで比較)が30〜40度以上曲がってくると、外見からもはっきりわかります。肩の高さの左右差、深くお辞儀をしたときの背中の肋骨の形の左右差などが現れます。成長期で20度以上の側弯症では、それ以上の変形を予防する目的で、装具などによる治療をします。60度以上の側弯症では、心臓や肺の機能に障害が生じることがあり、手術で側弯を矯正する場合もあります。
 ベータさまの側弯症はどのタイプなのかわかりませんが、レントゲン検査ではじめて診断がつくのですから、ひどい側弯症ではなさそうです。また、成長終了後に40度以下の側弯症はあまり問題を起こさないといわれています。
 まだお若いですし、他に大きなご病気や持病もないのであれば姿勢異常、軽度の特発性側弯症などの可能性が高いでしょう。いずれにせよ、外見上わからない程度ですから、側弯症それ自体を手術で治す必要はありません。
 反対に、何らかの原因(特発性側弯症など)で側弯症が存在すると、そのために腰痛・背部痛・肩こりなどの症状が出現することがあります。左右の背骨の筋肉にアンバランスが生じるからです。痛みが強いときはコルセットを装着したり、鎮痛剤・筋弛緩剤などを服用するのもいいかもしれません。また腰痛等の予防には、全身のレラクゼイション、ストレッチング、腹筋・背筋の訓練などのリハビリが有効です。スイミングは背骨に荷重がかからないので、お勧めの運動です。

(Jun/20/1998)

K-F [98年 6月 17日 (水) 0時 10分]

 はじめまして。
 私は、一昨年の秋(10月)からバイク便の仕事を始めましたので、寒い冬も雨の日も関係なく毎日12時間くらいバイクに乗っていました。その冷えや疲れが溜まったのか、去年の4月半ばに家で掃除をした後ギックリ腰になって動けなくなってしまいました。その日はちょうど土曜日の午後で近くの病院は休みだったので、知り合いの針の先生の所に連れていってもらいました。針を打った後は一時的に痛みが和らぎましたが、夜になってまた痛みだし眠れませんでした。
 一日おきに針治療に通いましたが、一週間たって先生が「もうバイクに乗って大丈夫だ」と言うので、自分ではまだ痛かったのですが試しにバイクに乗ってみました。ところが、乗っている最中も痛くて痛くてしょうがありませんでした。家に戻ってから靴下を脱ごうと軽くかがんだところ、またもやギクッとなり動けなくなりました。そんなこともあって、今度は違う先生を紹介してもらい指圧の先生のところに通いました。その先生が上手だったのか日に日に良くなりました。
 しかし、完全には戻らず常に腰の(背中と腰の間くらいの左側)圧迫感というか鈍痛を抱えたまま8月にバイク便の仕事に復帰しました。しかし、やはり冬の期間は痛みが強くなるので1月から今年の5月までは、他の仕事をしていました(ワープロ打ち)。そして、5月の半ばから再びバイク便の仕事を始めましたが、6月のはじめに再び痛みでバイクに乗れなくなり、いい加減病院で検査を受けなければと思い、近くの整形外科にかかりました。
 レントゲンを撮ってみると「一番下の方の腰椎の間がつまっている」とのことで、MRIの検査をする事になりました。その結果、レントゲンでつまっていた部分ではなく、いつも痛かった「背中と腰の間あたりが椎間板ヘルニアになっていて、それもかなり大きいので手術が必要」と言われました。私としては、まさかヘルニアになっているとは思ってもいませんでしたし、まして手術しなければならないとはまったく予想していなかったので「しばらく考えさせて下さい」と言って家に帰ってきました。
 どうにかして手術をしないで済む方法はないのでしょうか?どうしても仕方がないのであれば、あきらめますができれば手術は避けたいと思います・・・・。それから、手術するとしたら、どの様な事でどのくらいのリスクがあるのですか?それと、ヘルニアになったきっかけは、やはり去年のギックリ腰なのでしょうか?
 お忙しいとは思いますが、何かアドバイスがありましたらお願いいたします。

[tomos]

 MRI のフイルムを拝見したわけではないので断定的なことは言えませんが、結論から言えば、腰痛だけが主症状の場合は「腰椎椎間板ヘルニアを摘出する手術(髄核摘出術)」を実施することはありません。これはヘルニアの大きさには関係ないと思っていただいて構いません。
 椎間板ヘルニアを摘出する目的は、飛び出したヘルニアが神経を圧迫して下肢の麻痺・痛みなどを生じている場合、その原因の椎間板ヘルニアを摘出することにあります。決して椎間板を治しているわけではありません。いったん傷んだ椎間板組織を元に戻す方法はないのです。腰椎椎間板ヘルニアで手術が絶対に必要となるのは、神経の圧迫のために、(1)麻痺が著しくて歩行などに障害がある場合、(2)神経症状として排尿・排便障害がある場合、(3)下肢の神経痛がいちじるしい場合などで、いずれも保存的治療(手術をしない治療)が無効な時です。  K-F 様の場合、椎間板が傷んで腰痛をきたしているとすれば、もし手術をするなら傷んでいる部分の「腰椎を固定する手術」になります。しかし、この手術に関しても、手術の必要性の有無、手術方法、手術の長期的効果など専門家の間でも意見が異なり、「これが正しい」というゴールデン・スタンダードはありません。
 腰痛に関して言えば、基本的には、まず安静やコルセット装着、鎮痛剤等の服用、牽引、痛みが少しましになれば腰椎のレラクゼイション・腹筋等の強化などのリハビリを行います。K-F 様は、標準体重を約20Kgオーバー(腰痛が出現してから10Kg増加)していらっしゃる女性ですが、減量が必要なことは言うまでもありません。
 最後に、椎間板ヘルニアになった原因ですが、1回きりの出来事(ぎっくり腰)だけで椎間板が傷んで飛び出すということは考えにくいと思います。長年の椎間板へのストレスが椎間板を傷め、時間が経つにつれ徐々に、あるいは何かの拍子に突発的にヘルニアになると考えています。過度な重労働・スポーツ、悪い姿勢、肥満、喫煙、運動不足など腰痛・椎間板ヘルニアの原因は数多くあります。
 画像診断の一助として脊髄造影検査は受けられてもいいかと思いますが、手術というものは治療法の一つにすぎず万能ではないということを常に念頭に置く必要があります。tomos が思いますには、K-F 様の場合、手術以外に御自身でできることがまだあるように感じます。

(Jun/19/1998)

TSーKYO [98年 4月 22日 (水) 15時 01分]

 小学校2年の男の子のことです。1ヵ月前ぐらいから、首を左にグルッとまわすと首の左後部辺りでポキッという音がします。
 大人なら何でもないのですが、本人は気になるようで、1日に何回も回してちょっと痛むような感じもあるようです。まわさないと別状なく、右まわしの時はなりません。(左回しの時は必ず鳴ります)
 成長期の一時的なもので、心配ないのものでしょうか。

[tomos]

 首を回すと音がする方は時々みかけます。成人にも小児にもあります。ただ、これが臨床的にどういった意義があるかという議論はあまり耳にしません。
 脊椎は椎体という円柱形の積み木が椎間板を介して縦に連なり、その後方が脊柱管という脊髄がとおるトンネルになっています。そのトンネルの外壁の骨(椎弓)が椎体とつながる(左右の)根もとは、上下各椎体間で関節を形づくり、椎間関節と呼ばれています。首を回したときに音がするのは、この椎間関節でしょうか...。椎間板が音を発するとは思えませんし...。また、脊椎の後方は、恐竜の背骨のようにイガイガになっていますが、この各イガイガを棘(きょく)突起と呼んでいます。ひょっとしたら、この棘突起の周辺で音がしているのかもしれません。もしこの棘突起で音がしているのでしたら、音がするとき手で触っていると、その部位がわかると思うのですが...。
 いずれにせよ、音がするのは特に異常とは思いませんが、故意に日に何度も音をさせるのは感心しません。これが長年続くと、椎間関節や椎間板を早く傷めてしまい、椎間板ヘルニアや頸椎症をおこしやすくなるような気がします。まだ幼いうちに、念のためこういった悪い習慣はやめた方がいいと思います。

(Apr/29/1998)

M.H. [98年 4月 22日 (水) 23時 30分]

 HPを拝見してぜひご相談したくなりました。私は32歳ですが、昨年3月末に腰椎椎間板ヘルニアで手術をおこないました。
 今年になって、ちょっとしたきっかけで首のレントゲンをとったところ、頚椎の一部の椎間板が狭くなっているとのことで、外来で牽引治療をすることになりましたが、実際のところ効果はあるのでしょうか?
 腰椎ヘルニアのときは進行していたせいか、あまり効果がなかったので心配です。医師は「程度としては軽いものである。」といっていますが、過去のこともあるので非常に気がかりです。また、進行しないためによい方法がありましたらお教えください。
 できることならば、このまま手術をしないで過ごしたいので、よきアドバイスをお願いいたします。

[tomos]

腰椎と頸椎の牽引療法について説明いたします。

腰椎の場合

 股関節と膝関節を軽度曲げた状態で、腰を足側・斜め前方に牽引します。これにより、腰椎の前方凸の「そり」が緩和され、腰椎にかかる負担が軽減されます。椎間板ヘルニアの場合、椎間板の内圧が下がり(圧迫され、痛みを生じている)神経根にかかる圧力が減少することが期待されます。
 決して「飛び出した椎間板ヘルニアを、牽引で元に復元する」ということを期待しているわけではありません。また、そのようなことは不可能です。ヘルニアが治らなくても、神経根の炎症がおさまれば、痛みは軽減・消失していきます。

頸椎の場合

 頸椎の牽引では、頭蓋を頭側方向に牽引します。外来通院では、座った状態で垂直に牽引します。また、この牽引セットは市販されていて、自宅で牽引される方もいらっしゃいます。入院して牽引する場合は、ベッドに寝た状態で頭側に牽引します。時には頭蓋骨に金具を装着し、頭蓋骨ごと牽引する場合があります。
 頸椎椎間板ヘルニアの場合、牽引によって椎間板の内圧が下がり(圧迫され、痛みを生じている)神経根にかかる圧力が減少することが期待されます。腰椎と同様に頸椎の場合も、牽引で「椎間板を元の健康な状態に復元」しているわけではありません。いったん傷んだ椎間板は、元の健康な状態には戻りません。ヘルニアが治らなくても神経根の炎症がおさまれば痛みは改善します。軽い脊髄の圧迫症状がある場合でも、改善することがあります。

 頸椎椎間板ヘルニアを進行させないためには、これ以上頸椎に負担をかけないことが大切です。ふとした日常生活動作も頸椎の老化を早めます。たとえば、「はい」と言ったり、うなずく時に、首を数回前後させる癖のある方がいらっしゃいますが、これも長年の間には椎間板の老化を早めます。
 ゴルフなどのスポーツもよくないと思います。首から下は回っているのに、頭を動かすなというんですから。ヘッディングをするサッカーもしかりです。また、喫煙も椎間板の老化を早めます。

(Apr/26/1998)

N.K. [98年 4月 20日 (月) 23時 26分]

 母親の病状をどう考えるかについてアドバイスをお願いします。
 私の母親はかかりつけの病院で腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬の投与を受けています。主治医のお話によると、この病気では症状が軽い部類に入り、まだ手術の段階ではないとのことです。しかし、こちらのHPの手術の説明を読むと、現在の状況はかなり重いようにも感じるのです。
 朝方になると、必ず痛みが襲い、数時間にわたってねむれません。痛みのため歩行もままならなくなっています。痛みで食事もできない ことがあります。このような状況はこの病気では軽い症状なのでしょうか。家族としては、毎日苦しむ母親を見るのが不憫です。
 また、こちらのHPの説明によりますと、後遺症の例として痴呆症が挙げられています。家族としてはかなりショックでした。この後遺症についての手術のリスクはどの程度のものなのでしょうか。私の母親は現在70才です。
 最近、気になる症状として、しびれと痛みがひどくなる時は必ず足が極度に冷たくなります。血管の障害も考えたほうが良いのでしょうか。
 ご多忙中恐縮ですが、主治医の先生になかなか聞き難いので、ぜひ一般的な解答でもけっこうですのでアドバイスをお願いします。

[tomos]

>朝方になると、必ず痛みが襲い、数時間にわたってねむれません。

 朝方に痛むのは、鎮痛薬の効果が薄れるからでしょうか。現在のお母様の主症状は痛みのようですが、痛みに関しては薬物療法や硬膜外ブロック等を行い痛みが楽になることがあります。
 歩行障害はありますか?「数10m歩くと脚がしびれて前進しにくくなり、休憩をするとまた歩けるようになる」という症状(間歇跛行)はありませんか?腰を前屈みにしていると下肢のしびれ等が軽く歩きやすくなる場合は、腰を少し前屈みの状態に保つコルセットを作製し、症状が軽くなることがあります。

>このような状況はこの病気では軽い症状なのでしょうか。
>家族としては、毎日苦しむ母親を見るのが不憫です。

 手術をするかどうかは、保存的治療でよくならない場合に、症状、検査結果、患者の年齢・持病・生活等を総合的に判断して決めるべきであると考えます。
 具体的には、「強度の痛みが続いたり、歩行障害が著しく日常生活に支障があったり、膀胱障害があるような場合は、MRI検査や脊髄造影検査等を行い、場合によっては手術をすることがある」ということになります。

>また、こちらのHPの説明によりますと、後遺症の例として
>痴呆症が挙げられています。家族としてはかなりショックでした。
>この後遺症についての手術のリスクはどの程度のものなのでしょうか。

 手術後は、しばらくベッドで寝たきりになりますが、たとえば80歳以上の高齢者では、この間に「痴呆の出現・進行、床ずれ、肺炎・膀胱炎等の併発がみられることがある。」という意味です。

>最近、気になる症状として、しびれと痛みがひどくなる時は
>必ず足が極度に冷たくなります。血管の障害も考えたほうが
>良いのでしょうか。

 動脈硬化、糖尿病などの疾患はないでしょうか?これらの疾患では、動脈がつまって、下肢の血行が悪くなることがあります。また、一般に、下肢の痺れ・痛み等が強いときには血行も悪くなります。(神経の影響です。)

>ご多忙中恐縮ですが、主治医の先生になかなか聞き難いので

 遠慮なく主治医に質問してください。患者や家族の質問・疑問に答えるのも、医師の職務です。

(Apr/21/1998)

もへじじぃ [98年 4月 15日 (水) 20時 09分]

 最近腰痛(という表現が正しいのかわかりませんが)がしばしば襲ってきて、起きるのも辛いときがあります。痛い方の片足は、立った状態では痛くて前へあげられず,寝た状態であげると「コキコキ」と音がします。ちょうどふくらはぎがつったときのような痛みが、臀部の上側のやや中央よりによく発生します。
 痛みが発生するのは不定期で,以前近くの整形外科にかかりましたが,そこではレントゲンを撮りましたが、抗炎症薬と鎮痛剤を処方されただけでした。薬を飲むとしばらくして良くなりますが,またしばらくすると突然痛くなったりします。
 ただの腰痛なのでしょうか?繰り返して痛みが出ないようにする方法はないものでしょうか?

[tomos]

 腰痛に下肢の痛みや痺(しび)れを伴っている場合は、腰椎椎間板ヘルニアが疑われます。TOMOSの「整形外科手術説明書」に「(腰椎椎間板ヘルニアに対する)髄核摘出術」の説明があり、その中で腰椎椎間板ヘルニアに関して詳しく説明しています。
 ご相談の内容だけでは、下肢痛がどういった種類のものなのか、どの程度なのか明らかでありませんが、症状のある方の膝を伸ばしたままの状態で脚が挙げにくいのであれば、椎間板ヘルニアが神経を圧迫している症状である可能性が高くなります。症状のある方の下腿や足の甲の感覚が鈍っていたり、足の趾(ゆび)の力が弱っているようでしたら、さらにその可能性が高くなります。
 MRIという検査で腰椎の断層写真をとると、椎間板ヘルニアの診断は容易につきます。ときには神経を圧迫しているのが椎間板ヘルニアでなく腫瘍である場合もありますが、これもMRIで容易に鑑別できます。
 この他にも様々な原因で腰痛が生じますが、椎間板ヘルニアでなくても臀部への放散痛を感じることがあります。腰痛は、まず予防が大事で、「腰痛の予防」に詳しくお書きしています。

(Apr/18/1998)

ちか [98年 3月 09日 (月) 15時 03分]

 私は胸郭出口症候群で、一昨年に両手の肋骨の半分を切除する手術を受けました。そして、昨年鎖骨の神経をとる手術を受けました。この病気の症状は、4年ぐらい前からあったのですが、どこの大学病院に行ってもわからないと投げ出されてしまい、一昨年にようやく権威のある病院の先生に助けられました。
 今現在の症状は、両手の痺れと痛みが背中から腕にかけてあります。そしてこれはそれと関係あるのかはわかりませんが、腰の痛みがひどく歩くのも結構辛い状態なのですが、この病気と関係あるのでしょうか?この腰の痛みはもう既に3週間以上あります。お手数をおかけしますがご回答の程よろしくお願いします。

[tomos]

 首から腕に行く神経と、心臓から腕に行く血管は、その途中で第一肋骨・鎖骨・首や胸の筋肉などから形作られたトンネルを通ります。「なで肩」の若い女性などではそのトンネルが狭く、そのトンネルのところで神経や血管が圧迫されたり引っ張られたりする症状が出現することがあります。この状態を、胸郭出口症候群と呼んでいます。
 手作業、キーボード操作などで症状が悪化することが多く、肩の周辺の筋肉が弱々しい「なで肩」の女性によく見られます。治療は、姿勢の改善、肩・首・背骨の筋力強化、レラクゼイション、症状が強いときは鎮痛剤などの服用・神経の注射などが行われています。これらの保存的治療で良くならない場合は、第一肋骨を切除するなどの手術が行われる場合があります。
 「なで肩」の女性は一般的に華奢(きゃしゃ)で、柳腰とよばれる体型が多く、姿勢・筋力不足の関係で腰痛も出現しやすいと思われます。治療・予防には、やはり姿勢の改善、筋力の増強が必要でしょう。具体的には、軽いスイミング・エアロビクスなどがお勧めです。毎日でなく週に2〜3回が疲労も蓄積せず、また継続できます。お近くのスポーツジム・フィットネスクラブに行きましょう。インストラクターが親切に指導してくださるはずです。また、隔日に20分以上、大きく腕を振ってウォーキングをされるのもいいでしょう。

(Mar/12/1998)

ちか [98年 3月 13日 (金) 15時 09分]

 お返事有り難うございました。この間は、自分の紹介もせず失礼致しました。私は、25才の女性です。
 この前相談した腰痛のことなのですが、この痛みは突如として現れるんです。前にも突然歩けなくなったり、背中が急に痛くなりベッドから起き上がれなくなったりということがあったんです。その時は不思議と一時的に手の痺れと痛みが薄らいでいるような気がしました。この病気というのは、悪化するとあちこちに痛みが移動するということがあるのでしょうか?
 昨年までに、3個所(肋骨、鎖骨)を手術しているのですが、少しも楽になっていないような気がするのです。今の手の症状というのは、背中からの両手の痺れと痛みがあり、両手の指がまっすぐ伸びずむくんで熱を持っている状態です。特に右手に関しては、肘からむくんでいます。そして、今現在飲んでいる薬は、メチコバール、インフリー、ムコスタの3種類を服用しています。その前は、インフリーの代わりにロキソニンを服用していたのですがぜんぜん効かなかったんです。今は、インフリーを服用していますが、これもぜんぜん効かないのです。病院の先生に「薬を飲んでもぜんぜん効かないのですが」と言ったら「手術しか方法が無いのだけれど、様子を見たいのでとりあえず薬を服用しているように」と言われました。一応今年の夏頃に残りの左の鎖骨の神経を切除する手術をする予定なのですが、担当の先生はこの手術で本当に良くなるという保証が無いので迷っているようです。担当の先生には、「ここまで悪化しているので、手術をしても完全に治るということはない」と言われました。
 話は変わりますが、私は趣味でテニススクールに週1回通っているのですが、これは手にとって良いことなのでしょうか?あまり手の調子が良くないと自分で判断したときは極力休むようにはしているのですが・・・どうかよろしくお願いします。

[tomos]

 重力のある地球上を直立二足歩行する人類にとって、腰痛は宿命的なものです。ご存じのように背骨は横から見るとS字カーブを描き、力学的に強い構造になっています。しかし、24時間常に背骨をまっすぐにしているわけではないので、特別な背骨の病気がなくても、ふとした日常的な動作から予期せぬ腰痛に見舞われることがあります。俗に言う「ぎっくり腰」です。欧米では「魔女の一撃」と呼んでいます。
 特に朝は要注意です。まだ体が寝ている状態なので、動作が鈍く腰をやってしまいます。布団やベッドから起きあがるときは危険です。朝目が覚めたら、できたらベッドのなかでしばらく様子をうかがい、ぱっちりと目が覚めてから、おもむろに起きあがるのがいいでしょう。洗面の時、腰を前にかがめますが、この時にギクッとくるケースも多いです。洗面の時は、少し膝を曲げ、背骨のS字カーブをくずさないようにして顔を洗いましょう。スクワットの姿勢です。
 また、物を取ったり持ったりする動作で(特に重い物を持たなくても)、腰が前かがみになった時などに、よくぎっくり腰になります。物を持ち上げるときは、膝を曲げ、腰を落として、荷物は体の近くで、背骨はなるべくまっすぐにして持ち上げましょう。また、重い物を持ち上げるときは、できたら多人数で協力し合って持ち上げましょう。人は一人では生きていけません。
 長時間座った姿勢(たとえそれがどんなに良い姿勢であっても)など、同じ姿勢を続けるのも腰にはよくありません。腰の筋肉が長時間つっぱった状態になります。また、座った状態では、腰の椎間板(背骨のクッション)にかかる圧力が、まっすぐ立った状態に比べて1.5倍かかると言われています。電車の中では乗客は競って座席に座ろうとしますが、立っている方がかえって腰への負担が少なく、また脚の筋力トレーニングにもなります。(しかし、やっぱり座った方が本が読みやすいし、だいいち居眠りできますね...)
 肥満も腰痛の原因になります。おなかが出ると腰椎の前方に数Kgのおもりをしょっているのと同じで、腰椎の負担が増えます。「TOMOS 現実的な正しい減量法」を参考に、肥満の解消・予防に努めましょう。
 以上は主に「姿勢」のことについて述べましたが、もう一つ、腰のまわりの筋肉、特に「腹筋」が大事です。腰を痛めた時、コルセットを腰のまわりに巻くと腰痛が楽になりますが、腹筋は生まれ持ったコルセットです。腹筋を鍛えましょう。腹筋を鍛えるというと、特別な体操を思い浮かべる方が多いと思いますが、座った状態でも、おなかに力を入れてやるだけで、これは立派な腹筋の体操(等尺運動)になります。これなら電車の中でもできます。(ただし、おならが出ないように気をつけましょう。)
 人間は歩く動物です。二日に一度は早足で20分以上歩きましょう。特別なスポーツは興味や動機づけがなければ長続きせず、週に一度のスポーツは、しないよりはましですが、健康にはあまり寄与しません。一週間のうちに、向上した「体力」(持久力・瞬発力)が元に戻るからです。また、一週間に一度、体をスポーツ傷害の危険にさらすことになります。一週間に一度スポーツをしているからといって、健康に特別に良いことをしていると思わない方が賢明だと思います。
 腰の椎間板は、20歳頃から「老化現象」をおこし始めますが、曲げられたり捻られたりするのに弱いと言われています。テニスはゴルフと同様、腰を曲げて捻る動作をしますが、腰痛をおこしやすい人や既におこしている人には不向きなように思われます。また、テニスは片腕だけを使うので、両側の胸郭出口症候群の患者様にとっては良いスポーツだとは思われません。(でも、スポーツをして汗を流すのは良いことです。もし興味を持ってテニスをなさっていらっしゃるのなら、どうぞお続けください。)
 腰痛は、脊椎の病気だけでなく、ときには膵臓・肝臓等の内科の病気、尿管結石等の泌尿器科の病気、婦人科の病気などの一症状として現れることがあります。「腰痛」の気になる方は、医師の診察を受けておきましょう。

(Mar/16/1998)

A.D [98年 2月 15日 (日) 1時 24分]

腰部脊柱管狭窄症の手術は、難しいのですか?
ちゃんと歩けるようになるのですか?
日数は、どのくらいかかるのですか?

[tomos]

 腰部脊柱管狭窄症については、「TOMOS 整形外科手術説明書」に説明があります。「腰部脊柱管狭窄症に対する開窓術等(全身麻酔)」を参照して下さい。
 なお、脊椎の変形が著しい場合は、開窓術ではなく椎弓切除術になります。これは、狭窄の原因になっている部分の椎弓を切除して、神経の圧迫をとる方法です。

(1)腰部脊柱管狭窄症の手術は、難しいのですか?
これらの手術は、脊椎外科の専門医にとっては、いつも行っている手術です。

(2)ちゃんと歩けるようになるのですか?
的確な診断、適切な手術法の選択のもとに正確な手術が行われれば、症状は手術前より改善します。ただし、完全に元の健康な時の状態に戻るわけではありません。

(3)日数はどれくらいかかるのですか?
手術後は、ベッド上の安静臥床が10日〜3週間。
その後コルセットを装着して歩行開始。
コルセット装着は3ヶ月間必要です。
入院期間は、1〜2ヶ月程度の人が多いです。

(Feb/15/1998)

S.R [98年 2月 06日 (木) 1時 24分]

腰部癒着性クモ膜炎について、教えてください。どういうものですか。

[tomos]

 tomos は「腰部癒着性クモ膜炎」の経験がありませんが、tomos が知っている範囲でお話しいたします。
 腰椎(背骨の腰の部分)には、脳・脊髄から続く神経が通る管が柱のように上下に貫いています。これを脊柱管と呼んでいます。この腰部脊柱管を通る神経は下半身の知覚・運動等を司っていて、腰椎から根っこのように順番に枝分かれし、それぞれの役目の部位につながっています。この脊柱管内の神経を包んでいる液体(髄液)は硬膜という膜でおおわれていますが、この硬膜の直下をクモ膜といい、蜘蛛の巣のようにモヤモヤとしているためこう呼ばれています。
 腰部癒着性クモ膜炎は、脊柱管内の神経が主にクモ膜などのまわりの組織と癒着(べっとりとくっつくこと)した状態を言います。原因となりうるのは、外傷、手術、腰椎麻酔、脊髄造影検査(特に油性造影剤)、腰椎穿刺、炎症、出血などがあり、これらによって脊柱管内の神経がまわりの組織と癒着することがまれにあるそうです。
 症状は、これらの神経の麻痺や刺激症状で、下肢の知覚障害(しびれなど)・下肢の痛み・下肢の運動麻痺・排尿排便障害・インポテンツなどが考えられます。それらの症状の軽症から重症まで、症例ごとにさまざまな病態があり得ます。

(Feb/6/1998)

T.K [98年 2月 04日 (木) 17時 46分]

 39歳、男性。現在頸椎椎間板ヘルニヤで通院しています。担当医の説明では5番目と6番目の頸椎の間でヘルニアとなっており、かなり進行しているので早期の手術を勧められています。

 現在の症状は下記の通りです。
・疲れたときに強い頭痛がでて、嘔吐する場合がある。
・右手の握力低下(左手40kg、右手2〜30kg)右利きです。
・靴の爪先をよく引っかける。
・鎮痛剤を3年以上服用しているせいか、瀕尿(回数が多い)で夜間早朝に目が覚める。

 担当医からは前方からの固定になると説明を受けました。仕事の関係で長期の入院はなかなか難しく、また普段はあまり自覚症状がなく、手術のタイミングを思案しております。また、趣味のフリークライミング(岩登り)を続けられるのかどうかも迷っている原因です。手術の内容、タイミング、術後についてアドバイスをお願いいたします。

[tomos]

 頭痛や嘔吐、片麻痺などは脳の病気からも出現しますが、ここでは頸椎椎間板ヘルニアとして、まず基本的なことからお話させていただきます。(「TOMOS 整形外科手術説明書」に類似の記載があります。)

<総論>
 頸椎(首の骨)には、脳から続く脊髄という大事な神経が通る管が、柱のように上下に貫いています。これを頸部脊柱管と呼んでいます。この頸部脊柱管を通る脊髄は首から下の機能を司るいわば通信回線の幹線のようなもので、脊髄から神経が根っこのように順番に枝分かれして(神経根といいます)、それぞれの役目の部位につながっています。
 頸椎の老化(20代から始る)や酷使、炎症、外傷などのため椎間板(頸椎の柔軟材やクッションの役割をしています)が傷み、脊髄や枝分かれしていく神経(神経根)を圧迫することがあります。もともと脊柱管が狭窄(狭いこと)している場合は、この圧迫症状が容易に出現します。
 症状は四肢のしびれ、筋力低下などで、脊髄が圧迫されることによる痙性麻痺(四肢のつっぱりを伴う麻痺)が強い場合は、手の細かい動作の障害、歩行障害が顕著になります。
 軽い上肢の痺れなど症状が軽い場合は、安静、薬剤の投与、神経や硬膜外の痛み止めの注射(ブロック)、カラー装着、牽引等により症状が改善する場合があります。
 しかし四肢の麻痺のため日常生活に障害がある場合、神経の麻痺症状が重篤な場合(重度の場合は排尿・排便困難を伴う)は手術をして、神経の圧迫を取り除き症状の軽快や進行の予防をはかる必要があります。

<手術の適応(タイミング)>
1)
 手のしびれ・痛みなど神経根の圧迫症状(主に上肢の症状)があるが、歩行障害などの脊髄の圧迫症状が認められないときは、手術をしないで、上記にあるような種々の保存的治療で様子を見ます。しかし、症状が頑固で、日常生活にも支障があれば、神経根症状でも手術を選択することがあります。
2)
 脊髄が圧迫されている症状があれば手術を選択します。脊髄が圧迫されている症状は、ごく軽度のときは患者自身も気づかないことがありますが、階段を降りるときに下肢の脱力や、ツッパリ感で違和感・不自由を感じるようでしたら、それは明らかに脊髄が圧迫されている症状です。

<手術の内容>
1)
 頸椎椎間板ヘルニアとともに元々の頸部脊柱管狭窄が認められ、狭窄症が症状の主因となっている場合は、頸部脊柱管拡大術(「TOMOS 整形外科手術説明書」にあります)の適応になります。
2)
 狭窄症がないか、症状の主因になっていない場合は頸椎前方固定術の適応になります。しかし、狭窄症の症状がその後出現すれば、後日、頸部脊柱管拡大術を追加することがあります。

 ここで、頸椎前方固定術(「TOMOS 整形外科手術説明書」にあります。)について簡単にご説明します。
 麻酔は全身麻酔で行います。首の前方に切開を加え、頸椎の前方を露出します。ヘルニアを生じている椎間板を前方から切除し、脊髄や神経根の圧迫を取り除きます(除圧といいます)。
 次に、骨盤の腸骨(ズボンのバンドがかかる骨)から丈夫な骨を採取してきて、椎間板を切除して生じた空洞にはめ込み(骨移植)、その部位の頸椎を前方から固定します。骨移植したところは約3ヶ月で骨癒合します。

<術後>
 手術をしてから約10日間はベッドで寝たままです。手足の筋肉などが衰えないように、その頃からリハビリを開始しています。その後、手術前にあらかじめ作製しておいた頸椎の装具(丈夫なカラー)を装着して歩行していただきます。
 術後早期にカラーを装着し歩行していただく病院もあります。(骨移植部をチタン製のプレートなどで固定する方法の場合は、早期に歩いていただいているようです。)
 装具は約3ヶ月ではずします。
 入院期間はおおむね1〜3ヶ月です。
 仕事は最低3ヶ月間休職になります。

(Feb/4/1998)

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